「自分の仕事をつくる」を読んで

働く人たちをインタービューした内容に著者が考えていることを綴ったエッセーを加えたような内容ですが、そのどちらもが示唆に富んでいます。インタビューは主にデザインやものつくりに関連する人たちが対象です。

特に、「デザインしなければならないのは、モノそのものではなくそれを通じ得てられる体験だ。」と言うことには感銘を受けました。インタビューの中に共通して見て取れた事でした。このことを実現するために、観察したり、体で感じたりするのだと思います。

イヌイットは雪を示す100種類の名前を持っており、それらを使い分けるという。…(中略)…彼らが雪の世界で暮らすためには、その雪を高精細に見分け、伝え合う言葉が欠かせない。

対象をよく理解しているからこそ言葉が定義できる。とてもわかりやすい考え方ですね。人と仲良くなるには名前を尊重することが大事だとデール・カーネギーも書いていましたが、対象を観察することで違いを見つけ、違いがあるから異なる名前をつける違いを明確にするわけです。

プログラムの世界でも名前をつけることはとても大事です。大事であるが故にとても難しい。適当な名前をつけたときには後から出てくる似たような事象との区別をつけることができなくなる。そして安易に 「ほげ」と「ほげ1」なんて名前になってしまうことはよくあることです。具体化に失敗した例でしょうか。

こうして考えると、何かを作ると言うことはそのものをよく観察すると言うことから始まると言えそうです。そして、どれだけ観察するかが作るものに大きな影響を与えるのでしょう。

自分の仕事を作ると言うことをテーマにした本なので、その内容ももちろんあるのですが、また、こちらこそおもしろい内容なのですが、それはまた別な機会に…。

今年も残り少ないですが、とてもすばらしい本に出会えたように思います。